おのころ心平です。
僕は「ココロとカラダをつなぐセルフケアカウンセラー」として、29年間、多くのクライアントさんと出会ってきた中で、喜怒哀楽だけでは表しきれないほどのさまざまな感情と対峙し、それがどうやってカラダに影響していくのかを研究してきました。
その中でも「怒り」とは、決して心地よい感情ではないし、ないほうがいいと考えられがちですが、雨や風が大地に必要なように、人間のココロが健康を保っていくのに、「怒り」という感情のメリハリはむしろ不可欠です。
けれど、この3年間で、日本人のココロは、きちんと怒る、ということができなくなってしまったかもしれない……。
僕がこの本で、「怒り」という感情を取り上げたいと思ったその背景には、コロナ禍があります。
窮屈なマスク生活、リモートワークという孤立状態、ソーシャルディスタンスという同調圧力。公共の場では呼吸さえ恐る恐る。「職場や家族に迷惑がかかっては……」と、容易に風邪をひくことも許されず。
家族同士でさえ触れ合うことに躊躇するような異常な時期が続きました。
誰に、何に、怒りをぶつけてよいかも分からない。そんな理不尽な状況にもぐっと耐えて、大きな暴動やデモを起こすこともせず、日本人は本当に理性的でした。
しかし、不謹慎を承知で告白すると、僕は、その状況に対してこんなふうに案じてきました。
せめて風邪でもひいてカーッと熱を出すことができれば、イライラも少しは浄化できるのに、世間の目を気にして風邪さえひけないなんて!
風邪さえ、としたのは、僕自身、風邪は上手にひいてやることでカラダを浄化してくれる “自然の整体” のように考えているからなのですが、「ココロとカラダをつなぐセルフケアカウンセラー」として、今もっとも気にかけているのは、コロナ禍の3年間で行き場が失われたままになってしまっている「怒り」の行く末なのです。
ココロとカラダの中に溜まった怒りが、燃えかけの炭やプラスチックのように、毒を出しながらダラダラとくすぶり続けているかもしれない……。
そんなイメージが湧いてしかたありません。
ですから、騒動が落ち着いた今こそ、「怒り」のしくみ、そしてその行く末を明らかにして、「怒り」という感情と健やかに向き合うための本をつくりたいと思ったのです。
「怒り」の矛先がどこかといえば、「頭にくる!」という言葉からも、まず思い浮かぶのは頭でしょう。しかしそれは、喉、胃腸、背中、女性なら子宮にも向きます。
そして、「むっつり」「イライラ」「理不尽」「忍耐」などと、カラダの場所によって、留まる「怒り」の性質も分かれます。
怒りの正体に近づくことができれば、その対処法も見えてきます。本書を読み終わった頃には、あなたが持っていた「怒り」へのイメージも随分と変わっているかもしれません。
というわけで……
ようこそ、怒るカラダを癒す旅へ!
(本書 はじめに より)